2025/09/09 09:47

複雑に入り組んだ日本の山間部を流れる渓流を釣りあがり、美しい溪魚たちに逢いに行く最高の時間。
ネイティブトラウトフィッシングは、単純に魚を釣るということだけでなく、様々な要素が合わさった複合的なアクティビティーと言えます。
それは釣りというより「冒険」や「アドベンチャー」と呼んだ方がふさわしいかもしれません。
天候の変化と水量、地形とルート、落石や滑落、野生動物や虫などに気を配りながら魚たちとの駆け引きを楽しむ。
そこで出逢った魚たちは、どの子も野性味に溢れ、美しく凛々しい姿をしており、私たち釣り人の心を豊かにしてくれる存在。

そんな深山幽谷に棲むイワナ・ヤマメ・アマゴといった溪魚たちに逢いに行く為に開発されたのが、Afterglowを代表するアイテムである『STREAM CHASER BACKPACK ストリームチェイサーバックパック』です。
2021年の発売開始から多くのアングラーから支持されてきたSTREAM CHASER BACKPACKですが、この度アップグレードされて新登場!
今回はその全貌について詳しく綴ろうと思います。

設計コンセプトとデザイン
アップグレードにあたり、まず最初に考えたのはコンセプトでした。
前作の段階ですでに完成度が高く、ユーザーの方々から高評価だった為、無理して大きく変更するのも違うなと思いましたし、改善点を漠然と考えても「強いて言えば・・・」という点ばかりでアップグレードというよりマイナーチェンジ!?にしかならない。
そこで、根本的に設計コンセプトを見直し、下記の条件に合ったものにするには?という考えでアップグレードに取り組むことにしました。
アップグレードにあたってのコンセプト
① / より安全に遡行・山歩きができる
② / より遠くまでアクセスできる
③ / より長時間快適に竿を振れる
④ / より溪を楽しめる
①の「より安全に」という部分は、特にAfterglowが意識してモノ作りしている大切な部分です。
どんなに良い魚を釣ろうがケガをしたり遭難したりとトラブってしまっては、台無しです・・・
ただこの安全という部分は、非常に難しい
そもそもが危険な場所で行う遊びですので、ユーザーの方が安全に配慮できるように快適な使用感にすること
つまり、ストレスの掛かった状況下でバックパック自体がストレスになってはいけません。
そして安全装備を使いやすく収納・携行・使用できるようにすること。
例えばロープを例にとると、出すのがめんどくさいと「無しでも行けるかな?」と省きたくなりますよね。
逆にサッと出して快適に使えれば積極的にロープを出す癖が付き使い方にも慣れるので、無くても行けるかな?とギャンブルだった部分が、安全に通過できるようになり事故率が下がるわけです。
②の遠くまでというのは、渓流でいうと「奥地まで」ということになると思います。
これは渓流釣りをしたことのある方だと経験があると思いますが、ここまでと思ってもいても、ついついあの先がどうなっているのか気になり、奥地へ奥地へと釣りあがってしまう。
体力的に無理したり、装備が薄かったり経験や技術が足りてないのに難所を越えて行ってしまうこともあると思います。
もちろん結果的に降りてこられることが多いのですが、それは結果論。
100回同じ事をして100回帰ってこれないのは、やはり安全面で言うとギャンブルということになってしまいますね。
そこで安全装備を余裕をもって収納できることと、長時間の行動でも体力の消費を抑えて余裕を持った山行ができる仕様にすることにしました。
③の長時間竿を振れるというのは、特に重要な部分です。
私たちは魚を釣りに来てるわけですから、なるべく多くキャストしたいですし、できれば精度の高いキャストを長時間キープしたい。
場所によりますが、大体良い魚はラスボス的に最上部に居たりしますから、そこに至るまでに疲れて「いざ!」という時にミスキャストをしてしまってはもったいない・・・
複数人で入ると交代交代でキャストしますので、そこまで疲れないかもしれませんが、ソロで一日中となると、ものすごい回数のキャストを繰り返しますよね。
それでも最後まで竿を振れるようにしたいというのは、改善点として重要な部分でした。
最後に④のより溪を楽しめるっていうのは、とても抽象的ですがAfterglowのブランドコンセプトでもある”余韻に浸れる趣味人に向けた物作り”に直結する部分。
魚を釣るために沢を釣りあがりますが、釣れた釣れない以外にも多くの楽しみに溢れているのが渓流。
素晴らしい景色や四季の移り変わり、様々な種類の植物や動物の気配など非日常の世界がそこにあります。
写真を撮ったり、コーヒーを淹れてのんびり休憩したり、時にはハンモックでも持って行って昼寝をするのも良いかもしれません。
そんな幅広い楽しみも演出できるバックパックにしよう!というのが四つ目のコンセプトでした。
以上のコンセプトを踏まえた上で、デザインに関しては極力前作と同じデザインとなるようにしました。
普通はアップグレードするわけですから、デザインも一新したくなるのが常
売り手として、デザインを新しくした方が買ってくれるのではないか?と思うわけで・・・
当然、前作をご愛用して頂いている方も、デザインが新しくなっていると買い替えてみようかな?と思うかもしれません。
でも、すでに前作の完成度が高く使いやすいSTREAM CHASER BACKPACKにおいては、あえてデザインを前作に合わせることで使い勝手が共通な部分もあり、買い替えの方はストレスなく新しいバージョンへ移行できるし、あ!ここが良くなってる!と実感して頂けます。
また、そもそも今回のアップグレードは、基本設計から変わり、パターンもイチから引き直していますのでデザインがイコールでも、まったく別のバックパックであることが背負って頂くと分かっていただけるはずです。
実際に渓流で使って頂くとその進化を実感して頂けると思いますし、初めてSTREAM CHASER BACKPACKをお使いいただける方は、その使いやすさに感動して頂けるのではないかと自負しております。
この現場主義な考え方こそが道具として製品を作っている我々Afterglowのモノ作りであり、芯の部分にこそコダワリが詰まっております。
そして、デザインを前作と共通にしたことは、豊富なオプションパーツ類も今まで通り使えるということ
前作をお使いの方でオプション類を揃えて頂いた方にもフレンドリーな改良になっています。
以上がSTREAM CHASER BACKPACKのアップグレードを行う上での下準備と言いますかスタート地点
設計コンセプトとデザインに関してでした。
それでは、各所の仕様に関してみて行きましょう。

容量アップしたメインコンパートメント
方向性が決まったら新しくパターンを引き直します。
先ずはメインの荷室から決めて行きました。
背中の中心線からはじめましょう
シュッとペンを走らせますが、この最初の一本を引く時は、いつもワクワクします。
ですので大体のアイテムのパターンは、デジタルではなく紙で引きます。
その方がリアルサイズで線を引くのでやりながらも、こうかな?この方が良いかな?と3歩進んで2歩下がる的な修正をしながら進められるので、より理想の形に近づけやすい気がします。
だからフリーハンドの線も大切にしています。
パターンや縫製を学校で習ったわけでなく独学でここまで来ましたので、このやり方が正解かはわかりませんが、ただ経験上これが一番自分に合ったやり方かなと思っています。
手間はかかりますが、急がば回れ
個性的と評されるアイテムたちの生まれる過程です。
余談ですが、最近STREAM CHASER BACKPACKに似せたパクリ商品が出回っているそうです。
それを聞いて思わず笑ってしまいました(笑)
どんなに似せても元々のスタートが違うので所詮偽物は偽物
私たちのアイテムには、一つ一つの線やパーツの取り付け位置、縫製方法などにすべて意味がありますので、その理由を理解せずにコピーしても道具として100%の機能はしないでしょう。
話を戻しましょう。

荷室の容量は前作よりも増やそうと思いました。
これはコンセプトの①②の条件を考えると負傷時のファーストエイドポーチ、ビバークをする際のツェルトやヴィヴィ、着替えや防寒着、レインウエアーなどを余裕をもって収納できるようにする為です。
真夏なら最悪ビバークを余儀なくされても夜の冷え込みはあまり気にしなくていいかもしれませんが、シーズン初めの3~5月頃は防寒着はマストアイテム。
何があるかわかりませんから、その季節の夜の谷で体温の保持ができる装備で山に入りたいですね。
また、④にあるようにカメラを持って行ったり、バーナーとコーヒーやカップラーメンなどのお楽しみグッズも入れたいので、それに適した容量とバックパックの厚みと横幅にしてあります。
一応、メインの荷室の容量は控えめに言って23リットルと表記していますが、感覚的にはもう少しあるように感じるかもしれません。
色々詰めていくと前作よりだいぶ入る印象を持たれるでしょう。
もちろん荷物の少ない時は、両サイドのバンジーコードを調整してコンプレッションすることもできます。
形状としては、横に広くて縦と厚みは抑えたシェイプになっています。
これは倒木や木々の枝の下を潜ったりしやすく、また背中にランディングネットを取り付けた際に手が届きやすいようにする為
それでいて容量を確保するために少し横幅があるのが特徴です。

大きくなったロープポケット
今回のアップデートで一番変えたかったのがロープポケットでした。
STREAM CHASER BACKPACKを象徴するような縦に配された止水ファスナーのポケットは、前作では袋布が内側、つまりバックパックのメインの荷室のほうへ膨らむ構造でした。
これは、バックパックの厚みを変えないようにしてバックパック表に付けたランディングネットへ素早くアクセスできるようにする為の構造でした。
容量自体は、8mmの太さの長さ20mロープが収まるサイズ感で、詰めれば8mm×30mもギリOKでした。
バックパック自体が薄くて重心が身体に近くなるため、一体感や狭いところをすり抜ける時など動きやすさもありました。
しかし、ロープを入れるとメインの荷室の容量が減ってしまうという欠点もあり、一長一短。
そこでアップデートでは、表側へマチを付けたポケットに変更することにしました。
最近ランディングネットが、ハンディーパック社のインスタネットを原型としたスプリングフレーム方式の折り畳みが主流になりつつあることも考慮。
それだとウエストベルト部分にインスタネット用のホルスターを付けて運用しますので、バックパックの厚みは影響しません。
もちろん背面にランディングネットを付ける方も多くいらっしゃいますので、手の届く範囲に厚みが収まるようロープポケットを設計しました。
これでメインの荷室の容量を削ることなくロープを収納可能に
アップデート後のロープポケットは8mm×30mが余裕で入り、さらにハーネスと仕舞うこともできます。
※ハーネスの大きさにもよります。沢で使うようなコンパクトなタイプ推奨。
また、ルートに合わせて例えば8mm×20mmのロープとハーネス、10mのテープスリングなどを組み合わせて収納もできますし、簡単なルートならお守りに10mテープスリングを入れてあとはレインジャケットを入れたりするのも良いですね。
もちろん前作で好評だったロープの末端を通して保持できるループも付けました。
これはロープを掛ける時に末端が一発でわかるので非常に便利です。

そういえばまたちょっと話がそれますが・・・テープスリングはお勧めのお助けアイテム。
登山系のプロショップなどで切り売りしていますので、10mぐらいを両末端にループを作っておくと色々なシーンで便利です。
シングルで掛ければ10mほどの斜面をゴボウで昇り降りするのに使えますし、引き抜く前提で降りるなら2つ折りで5mの降下ができます。
その他、高巻きの時のトラバースで危険個所に張れば補助的に使えますし、技術の習得が必要ですが負傷者の担ぎ搬送などにも使えるアイテムです。

また、合わせて携行をお勧めするのが新発売されたFOLDING FIELD ZABUTONです。
これは、休憩する時の座布団としてはもちろん、もしもの時のシグナルフラッグとしても使えるアイテム
渓流はもちろん登山や冬のバックカントリーにもオススメの新商品です。
このように色々な用途で使えるようになったロープポケットは底の部分がアーチ状になっており、両サイドに水抜きが付いています。
濡れたロープやレインジャケットを収納しても水が抜ける構造です。

容量が倍増した上部のポケット
ロープポケットの上、バックパック表面上部にあるポケットも立体的にすることで容量の大幅アップを行いました。
前作同様にファスナーにはYKKのアクアガード(止水ファスナー)を使用しており、内部にはキーフックストラップも付けました。
車のカギや財布、偏光グラス、ヘッデン、撮影機材のバッテリーやモバイルバッテリーなどを入れるのに最適です。
そして、このポケットに隠れるようにランディングネットのマグネットリリーサー用のDカンと、フロントポーチやオプションのアタッチメントフック、デポジットドライバッグなどを取り付ける為のバックルが配してあります。
夏の虫が多い時期などは、ATTACHMENT HOOK for SCBに蚊取り線香ホルダーを取り付けるのもオススメですね。

サイドポケットとギアループ
両サイドにあるサイドポケットも深さと広さをアップしました。
前作は浅めに設定していたのですが、これには理由がありまして、よくあるバックパックのサイドポケットってどうしてもペットボトルや水筒を入れるイメージがありますよね?
でも沢ではこの手の上のあいたポケットにボトル類を入れておくとドボン(水没)した時などにボトル内の空気の浮力でボトルがポケットから出てしまい流されてしまうことが多いのです。
またドボンしなくても複雑な地形をアップダウンを繰り返しながら歩いていると、ボトルを落としてしまうかもしれません。
落としたボトルは結局ゴミになってしまう・・・
よく沢でペットボトルが落ちているのに出くわすことがあると思います。
多分わざと捨てていく人は少ないと思いますので落としちゃったんだろうな~と、見つけるたびに拾って帰るのですが、そもそもサイドポケットはペットボトルを入れるのには適さない浅いポケットにして、フロントポーチに飲み物を入れることを推奨したのが前作でした。
もちろんロッドケースや畳んだロッド、トレッキングポールなどは問題なく入る深さにして。

でも、やっぱりペットボトルを入れたい方もいらっしゃいますので、今回はボトルも入る深さに設定してあります。
その代わりポケット上部のバンジーコードをボトルの首部分に掛けられるようにしてありますのでボトルを入れる際は、バンジーコードで脱落防止をしてほしいなと思います。
作り手としての設定は、フロントポーチのどちらかに500mlのペットボトルを入れていただくのが一番オススメですが。
サイドのバンジーコードは上下2本ありますが、留める為のループは上中下の3か所あります。
固定する物の長さに合わせて留める箇所を変えてください。
そして、サイドポケットの底の部分には、雨などの水滴を逃がすための水抜きを設けてあります。
さらにサイドポケットの下部には、カラビナを掛ける為のギアループも完備。
スリングやカラビナ類、ビレイデバイス、タイブロックなど必要に応じてガチャをぶら下げてください。
ただガチャ類は歩行時に多少振られますので、アプローチの林道や登山道歩きはロープポケットにしまっておいて遡行時にギアループへ下げるのが良いかもしれませんね。
可動式のPivotシステムを採用したウエストベルトと背面のアルミバー
容量がアップしたことで満載時の重さはアップしますので、当然背負える重さもアップしなくてはいけません。
前作では、満載時の重さでも肩で背負える範囲でしたので、ウエストベルトの目的はオプションパーツやフロントポーチの固定がメイン。
しかし、容量アップした今回のバージョンでは、しっかりと腰に荷重を載せる必要が出てきました。
そこで採用したのがTOMANOにも採用しているPivotシステムを搭載したウエストベルト。

これは回転式のバックルを用いたAfterglow独自のシステムで、ウエストベルトの腰部分を中心にバックパックが傾斜するのですがバックパックの荷重は常に腰の中心に載った状態
つまり足を高く上げるような動作をして骨盤の角度が左右に傾いても荷重は中心ですし、脚上げの動きをウエストベルトが妨げることがありません。
登山道のように決まったルートを行くのではなく、沢を遡行する私たち釣り人は常にルートファインディングしながら岩を登ったり滝を登ったり巻いたりへつったり、倒木を潜ったりと・・・まあ無理な体勢が多いわけで
その動きに追随しつつバックパックの重さを腰で支えるこのシステムは、渓流釣りにピッタリな仕様と言えます。
またバックパックの背面に内蔵されている背面プレートと背骨に沿って入っているアルミバーが、適度なフレックスを残しつつPivotシステムと連動してバックパックの重さが肩に掛かるのを緩和してくれます。
アルミバーは使用前にご自身の背骨に合わせてS字に湾曲させると高いフィット感が出ますので、必ず調整して頂きたい部分です。
これによりほぼショルダーハーネスのストラップを締めない状態でもバックパックが保持できるので、肩への負担や干渉が少ないので長時間正確なキャストを続けることができるわけです。
ちなみにこのウエストベルトも背面パネルやアルミバーも取り外しが可能ですので、荷物が少ない時や街使いしたい時など状況に合わせてカスタムしてください。

さらに言うとこのPivotシステムのウエストベルトは規格が共通ですので、TOMANOへSTREAM CHASER BACKPACKのベルトを付けたりもできます。
TOMANO純正のウエストベルトはクッション性や締め付け具合が秀逸ですが、拡張性を持たせるならSTREAM CHASER BACKPACKのウエストベルトを付けるのもアリ。
状況に合わせて選べますね。
ちなみに、容量30リットルの本体にプラス容量できるCOL POUCH Lサイズも接続可能なTOMANOは、登山や溪伯釣行用に作られたバックパック。
お泊りグッズを詰め込んでのロングルートを釣りあがるのにもオススメで、日帰りはSTREAM CHASER BACKPACK、泊りはSTREAM CHASER BACKPACKのフロントポーチをUL HARNESS for SCBに取り付けてTOMANOとセットで運用すると、とても快適に使って頂けると思います。
ウエストベルト両サイドにはレーザー裁断されたMOLLEシステム対応のスロットがあります。
ここへは、体型に合わせてフロントポーチのクリップを取り付けて使うほか、豊富なオプションパーツ類、例えばFAST DRAW HOLSTER for INSTA-NETや最近山に入る時のマストアイテムとなっている熊撃退スプレーを携行するためのBEAR SPRAY HOLSTERなどを取り付けられます。
また、MOLLEシステムは世界共通規格ですので、軍用ポーチなどMOLLE規格の物でしたら他社製品でも取り付け可能です。
後編へ続く・・・
